「カメラ、始めてみたいな」
その想いはふとした日常の中で芽生えます。旅先の風景、子どもの笑顔、ふと見上げた夕暮れの空。その一瞬を、ただ“記録する”のではなく、“感じたままに写したい”と思ったとき、私たちはカメラという表現道具に出会います。
でも、いざ「買おう」と思っても、目の前に立ちはだかるのは数えきれないほどの選択肢。高価なプロ機から手頃なモデルまで、何を基準に選べばいいのか分からない。そんな迷いに、この記事が一つの指針になればと願っています。
ここでは、「いまの自分に合ったカメラ」を“値段別”で丁寧にご紹介します。大切なのは、高スペックかどうかよりも、心が動く瞬間にそっと寄り添ってくれる存在かどうか。予算の中で、どんな「相棒」が見つかるのか。さあ、あなたの「はじめての一台」を探しに行きましょう。
5万円以下で始める!初心者におすすめのカメラ
5万円以下という価格帯は、まさに「写真との出会いの扉」を開くためのステージです。最新モデルではなくとも、名機と呼ばれたカメラが中古市場には数多く存在します。ここで大切なのは、撮影に必要な基本性能がしっかりしていて、使っていて“楽しい”と感じられるかどうか。
本章では、そんな予算内で手に入る信頼性の高いカメラたちを、実際の魅力とともにご紹介します。
Canon EOS Kiss X7i
「初めての一眼レフ」として今も根強い人気を誇るX7i。2013年発売のモデルながら、タッチ操作やバリアングルモニターなど、今の初心者にも寄り添った設計が光ります。特に「撮りたい瞬間を逃したくない」人には、合焦の速さと使い勝手の良さが魅力。
また、キヤノンならではの温かみある色表現は、人物や風景を「見たまま以上」に仕上げてくれます。中古価格は3〜4万円前後。レンズキット付きでも手が届きやすく、ステップアップの土台としてもおすすめです。
OLYMPUS PEN mini E-PM2
「かわいいのに、写りは本格派」——そんな言葉が似合うのが、OLYMPUSのPEN mini E-PM2。小さなボディに、上位機種と同じ1605万画素のLive MOSセンサーを搭載。肌のトーンや自然光の柔らかさを、繊細に描き出してくれます。
軽量コンパクトで女性にも人気。操作系はシンプルながら、タッチシャッターなど先進的な機能も充実しています。初めてでも「撮ることそのものが楽しい」と感じさせてくれるカメラです。
Nikon D3400
Nikonらしい「精密な描写力」を持ちながら、初心者に優しいのがD3400。約2416万画素の高解像度センサーと、自然な発色は風景にもポートレートにも◎。さらに“ガイドモード”が搭載されており、カメラの操作をまるで先生のようにナビしてくれます。
Bluetoothでスマホに写真を送れるSnapBridgeにも対応しているため、SNSへの投稿もスムーズ。撮って、送って、共有して——「撮る楽しさ」がすぐ広がる一台です。
Canon EOS M10
「一眼レフは大きすぎるけど、スマホよりしっかり撮りたい」——そんな願いに応えるのが、CanonのミラーレスEOS M10。約1800万画素のAPS-Cセンサーで、ぼけ感のあるやわらかい写真が撮れます。
可動式の液晶は自撮りやハイアングル撮影にも便利で、旅先や日常のスナップにもぴったり。タッチパネル操作も直感的で、初めてでもすぐに慣れるはずです。
PENTAX K-S2
一見すると5万円以下とは思えないハイスペックを誇るのがK-S2。防塵・防滴に対応し、過酷な環境でもタフに使えるのが魅力。バリアングルモニターや視野率100%のファインダーなど、実用機として非常に優秀です。
特に山歩きやアウトドアといった“自然の中で撮る”ことが多い方にとっては、まさに頼れる相棒となってくれるでしょう。
5万円〜10万円で選ぶ!初心者向けミドルクラスカメラ
少し予算を上げて5〜10万円の価格帯になると、カメラの世界は一気に広がります。最新のエントリーモデルや、性能に優れたミラーレス機、動画撮影にも強いハイブリッドモデルが手に入るレンジです。
「趣味として続けていきたい」「写真だけでなくVlogやSNS投稿も楽しみたい」「多少の機能性にもこだわりたい」——そんな方には、このクラスのカメラがぴったりです。
Canon EOS R100
2023年に登場したEOS R100は、キヤノンのフルサイズミラーレスRシリーズの中で最も手頃なエントリーモデル。約2410万画素のAPS-Cセンサーを搭載し、写真の解像感・色の深みともに申し分ありません。
Rシリーズながら、操作は極めてシンプル。初めての人でも迷わず使えるインターフェースと軽量ボディが魅力です。将来的に上位モデルや交換レンズへのステップアップを考える人にも最適な“入り口”と言えます。
Sony ZV-E10
動画と写真、どちらも本気で楽しみたい人に人気なのが、SonyのZV-E10。YouTuberやVloggerの間でも高い支持を得るこのモデルは、瞳AFや背景ぼけ切り替え、内蔵指向性マイクなど、動画に最適化された設計が特徴です。
とはいえ、写真性能も十分。APS-Cセンサーに加え、ソニーらしい色の抜けの良さと軽快な操作感で、スナップ撮影や日常の記録にも活躍します。「ちょっと動画も撮ってみたい」初心者にはこれ以上ない選択肢です。
Nikon Z30
NikonのミラーレスZシリーズの中で、最も初心者に寄り添っているのがZ30。2416万画素のAPS-Cセンサーと最新の画像処理エンジンEXPEED 6を搭載し、特に高感度耐性が優れています。
小型・軽量なボディに加え、Vlog用途も意識した設計。バリアングルモニターや高性能マイク入力端子など、現代の「記録と発信」両方に応える設計です。写真と動画のバランスを大切にしたい方におすすめです。
10万円〜15万円で手に入る!初心者におすすめのハイエンドカメラ
10万円を超えるこのクラスになると、カメラはもはや“道具”というより、“表現のパートナー”として存在感を放ち始めます。高性能なセンサーとAF、動画対応、洗練されたデザイン性。どれもが、使う人の「もっと撮りたい」を後押ししてくれる要素です。
これからじっくり写真に取り組みたい人、あるいは「カメラと長く付き合いたい」という人にとって、この価格帯は最も後悔の少ない投資となるでしょう。
Canon EOS R50
「軽さと高性能のバランスを極めた一台」と呼ばれるEOS R50。EOS R100よりも上位にあたるこのモデルは、同じAPS-Cセンサーながら連写性能や動画機能、操作性に優れています。
特に4K動画撮影時でもクロップなしで記録できる点や、高速な被写体認識AFは、動きのあるシーンでも確実な一枚を約束してくれます。旅行、Vlog、ポートレート——なんでも一台でこなせる万能型です。
Nikon Z fc
見た瞬間に心を奪われる、クラシックな外観。それがZ fcの最大の魅力。往年の名機「FM2」をオマージュしたデザインと、最新ミラーレスの技術が融合したこのモデルは、「使いたくなるカメラ」という感情を呼び起こします。
スペック面でも、Z50譲りの高性能を備え、静止画・動画ともに申し分なし。ダイヤル操作中心のUIはフィルム世代にも親しみやすく、「写真を丁寧に撮る感覚」が自然と身につきます。見た目も使い心地も妥協したくない人に。
Sony α6400
α6400は、ソニーのAPS-Cミラーレスの中でも「実用機」として高く評価されるモデル。特筆すべきはAF性能で、リアルタイム瞳AFや高速・高精度な追従能力は、まさに“プロ並”の使い勝手を提供してくれます。
また、約403gと軽量ながら、頑丈なボディと充実のダイヤル配置で「使い込むほど楽しくなる」設計が光ります。趣味の一歩先へ進みたい人、ポートレートやストリートスナップを極めたい人に強くおすすめします。
カメラ選びのポイントと注意点
ここまで値段別におすすめカメラをご紹介してきましたが、選ぶときにもう一つ大切にしてほしいのが「カメラのスペック以外の部分」です。どれだけ高性能でも、使っていて楽しくない、もしくは自分の撮影スタイルに合っていなければ、それは“宝の持ち腐れ”になってしまいます。
この章では、カメラ選びで見落としがちなポイントや、後悔しないために確認すべきことを整理してお伝えします。
用途に合わせた選択
「何を撮りたいのか」は、カメラ選びの出発点です。風景?ポートレート?日常スナップ?Vlog?被写体や使用シーンが明確になると、必要なスペックも自然と見えてきます。
例えば、動く子どもやペットを撮るならAF性能が大切、日常スナップなら携帯性や起動の早さがポイントに。曖昧なまま選ぶより、「この瞬間を残したい」という想いを軸に選ぶことで、後悔のない買い物につながります。
レンズの互換性と将来性
レンズ交換式カメラを選ぶなら、「どんなレンズが使えるのか」「メーカーのラインナップは豊富か」も重要です。将来的に「もっと寄りたい」「もっとぼかしたい」と思ったとき、対応するレンズがあるかどうかは、表現の幅を左右します。
また、ボディは新しくなってもレンズは長く使える資産。レンズマウントの互換性は、未来の自分の写真生活に大きく関わってきます。
操作性と携帯性
カメラを持ち出す頻度を左右するのは、「重さ」と「直感的に使えるか」です。毎日のように持ち歩くなら軽さが命。とはいえ、グリップ感やダイヤル操作のしやすさなど、持ってみて初めて分かる「自分との相性」もあります。
できれば一度、実機を触ってみること。使っていて心地よいと感じられるカメラは、自然と出番も増えて、写真がぐっと身近になります。
アフターサポートと修理体制
見落とされがちですが、万一のトラブル時のサポート体制も要チェックです。国内メーカーであれば修理・サポート体制がしっかりしており、安心して長く使えます。
また、中古を購入する場合も、できれば保証付きの店舗や、整備された製品を扱う信頼あるショップを選ぶことが重要です。購入後の安心感が、撮影の自由さにもつながります。
まとめ:自分に合ったカメラで写真生活を始めよう
「カメラを始めたいけど、何を選べばいいか分からない」——そんな迷いの中にいたあなたに、この記事が少しでも光を届けられたなら幸いです。
カメラ選びに正解はありません。けれど、“いまの自分にとって心地よい一台”は、きっとあります。値段にこだわるのではなく、「どんな写真を撮ってみたいか」という想いに耳を澄ませてみてください。その声が、あなたにぴったりのカメラへと導いてくれます。
技術は後からついてきます。まずは一枚、シャッターを切ることから。あなたの感性で、あなたの視点で、この世界を切り取ってみてください。
“最初の一台”が、やがて人生の宝物になる。そんな写真生活が、今日から始まりますように。
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